2017.02.28更新

少数のインプラントで支える総入れ歯

たくさんの歯を失った場合、総入れ歯にせざるを得ないケースがほとんどです。

しかし、その結果以前のようにしっかりと噛むことができなくなり、入れ歯になかなか馴染めずお困りの方もいらっしゃることでしょう。

そこで今回は、しっかり噛めるようになりたい方におすすめの総入れ歯「オーバーデンチャー」の特徴やメリットなどを詳しくご紹介します。

 

 

オーバーデンチャーとは

歯茎に残った歯の根っこや、埋め込んだインプラントを支えにして、取り外し式の総入れ歯を装着する方法です。

土台があることで通常の総入れ歯よりもしっかり固定されますし、取り外してメンテナンスすることも可能です。

インプラントと入れ歯の長所を併せ持った装置といえるでしょう。

 

 

オーバーデンチャーのメリット

オーバーデンチャーは、普通の入れ歯に比べてどのように優れた面があるでしょうか。

メリットを詳しくご紹介します。

 

 

1.入れ歯が安定し、しっかり噛むことができる

食事シーンのイメージ写真

顎堤(歯茎の土手の部分)に入れ歯を固定する装置をつけるため、歯ぐきに乗せるだけで固定する通常の総入れ歯よりも安定性がよい入れ歯です。

 

 

2.最小限のインプラント外科手術で広い範囲を補うことができる

通常のインプラントの場合、1本に対して1つの土台を要しますが、

この装置は数本の支えだけで広い範囲の歯を補えるため、1本ずつインプラントにするよりも手術が少なくて済みます。

経済的にも身体的にも負担を軽減することが可能です。

 

 

3.顎の骨に刺激が伝わり退縮を抑制する

オーバーデンチャーを固定する土台は、骨に埋入されています。

乗せるだけの入れ歯に比べて刺激が骨にきちんと伝わり、顎骨の吸収を抑えられるという効果が生まれます。

 

 

 

オーバーデンチャーの種類

オーバーデンチャーは、固定する部分の形状の違いなどからいくつかの種類に分かれており、お口の状態によって使い分けられます。 

 

ボールタイプ

入れ歯と接する土台の先端がボール状になっており、

入れ歯側の金属にピッタリ合う金具を付けてホックのように固定する方法。

取り外しが可能です。

 

 

バータイプ

埋め込まれた2つの土台をバーで接続。

それをクリップで挟むような状態で歯側に装着します。

自分では取り外せないほど強固に連結されることが多いので、なかなか外しにくい装置です。

 

 

磁石(マグネット)タイプ

土台の先端に磁性金属、入れ歯側に小型磁石を装着する方法です。

入れ歯を乗せると自動的に磁力で引き合い固定される仕組みになっている装置。

自分で取り外すことが可能です。

 

 

オーバーデンチャーにするまえに知っておきたいこと

知っておきたいこと

オーバーデンチャーを作製する前に、デメリットもきちんと理解しておきましょう。

自身のお口の状況に合っているのかの参考になります。

 

 

外科手術が必要になることもある

土台としてインプラントを使用する場合は、埋入のための外科手術が必要です。

普通の入れ歯を作るときよりも、費用や身体的負担は増えることになります。

 

 

インプラントと入れ歯、両方のお手入れがかかせません

入れ歯も土台も手入れが肝心

入れ歯だけでなく、インプラントなどの土台の管理にも気を配らなければなりません。

入れ歯を清潔に保ち、定期的に調整して使用することはもちろんですが、

インプラント周囲炎などのリスクがあるため、土台部分も定期健診で管理してもらうようにしましょう。

 

 

オーバーデンチャー作製の流れ

入れ歯の作製に至るまでは、おおむね普通の入れ歯と同じです。ただしオーバーデンチャーを作製するためには歯茎に土台を作る工程があり、その方法が2つあります。歯の根っこを利用できる場合と、歯の根っこが無い場合の治療法です。

それぞれどのような流れで作製するのかをご紹介します。

 

 

1.オーバーデンチャー作製前に必要な準備

オーバーデンチャーの作製には、すぐに取り掛かれるわけではありません。

多くの歯を喪失しているということは、口腔内の状態が良くない可能性があります。

そこで、まずはお口の状態の確認をおこないます。残存する歯の状態(残せる状態なのかどうかなど)を確認するためにX線(レントゲン)等を用いて、歯の根っこや顎の骨を検査します。

また、金属アレルギーなどは無いか、歯ぐきなどの粘膜の健康状態は良好かどうかなど、さまざまな細かい確認作業をおこない、オーバーデンチャーを入れるにあたって問題が無いか確認するのです。

 

 

2.問題があれば治療をおこなう

もしも歯周病がある場合は歯肉の炎症を改善するように歯磨き指導をおこないます。また、残存している歯の状態によっては、神経の治療を行います。状態が悪い場合は抜歯をおこなうこともあります。

このように、お口の中を健康にするための治療が必要な場合は、治療を先におこないます。

 

 

3.オーバーデンチャー装着のための土台形成をおこなう

 

歯の根っこが利用できる場合

残せる状態の歯根があれば、形を整え、根っこの中の清掃を行います。万が一、歯の根の先に膿が溜まっているような状態であれば、先に根っこの治療を行います。

根の状態を整えたら、オーバーデンチャーの土台となる歯の根の上部に金属製の小さなキャップを被せます。

 

歯の根っこが残せない場合

歯の根っこを歯ぐきの中に残せないほど損傷している場合、歯の根っこの代わりにインプラントで土台を作成します。よってこの場合、インプラント埋入手術が必要になります。

インプラントの土台埋入後、インプラントの先端に金属製の小さなキャップを被せ、土台とします。

 

 

4.歯の模型作製のための歯型取りをおこなう

ガム状の歯科材料(印象剤)で上下の歯型を取ります。それをもとに石膏で歯型を作製し、技工士(又は技工所)へ入れ歯作製を依頼します。

 

 

5.噛み合わせの確認をおこなう

入れ歯作製前のお口の状態に合わせてオーバーデンチャーを作製するため、上下の顎の位置を確認し、パラフィンワックスを噛んでもらい、現在の噛み合わせを確認しておきます。

 

 

6.入れ歯の完成後の流れ

入れ歯が完成したら患者様に来院していただき、お口に装着します。

完成までに歯列や噛み合わせに動きがあるときっちり適合しない場合もあるため、微細な修正をしながら装着し、メインテナンス方法などを歯科従事者より指導します。

 

 

まとめ

オーバーデンチャーはたくさんの歯を失ってしまった方にとって、とても優れた方法です。

ただし通常の総入れ歯とは、作製過程や管理方法など異なることも多々あります。

インプラントと入れ歯の両方に精通した歯科医院を選び、

作製後・使用中もしっかりアフターケアを行ってもらえるようにしたいものです。

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