総入れ歯を使用していて「どうせ自分の歯がないのだから、入れ歯だけきれいにしておけばいいだろう」と思っている方はいませんか?
そんなことはありません!実は歯が無くてもお口の中のケアはとても重要なことなのです。 今回、歯が無いことによって起こる口腔粘膜の危険性や行って欲しい口腔ケア法などについてご紹介します。
歯の無い方が、口腔ケアを怠る危険性とは?
入れ歯を外し、しっかり洗っているだけではダメなのです!口腔内粘膜のケアも施さないと大変なことが起こる可能性もあります。
そこで、歯の無い部分の粘膜にも歯ブラシを当てることの重要性をお伝えします。
1.お口の細菌が気管を通って肺炎をおこす
普段入れ歯と接している歯肉や上あごには、入れ歯と歯茎の隙間をかいくぐって侵入した食物残渣(食べ残り)や細菌が付着しています。
粘膜の清掃を怠り不潔なままにしておくと、汚れの中で細菌が繁殖し気管を通って細菌が肺へと侵入。それが引き金となり、肺炎を引き起こすという事態を招く恐れがあるのです。
2.歯茎への刺激がないと退縮し、入れ歯が安定しづらくなる
歯茎に歯が無くなり、入れ歯が乗っているだけの状態では刺激が伝わらないため、歯茎の退縮が起こりはじめます。
歯茎の盛り上がり(顎堤)が少なくなると入れ歯を安定させる吸着力が働きにくく、作成した入れ歯と形も合わなくなり、安定しづらくなってしまいます。
3.唾液が減少し、粘膜の免疫力が低下する
唾液には、体内に侵入しようとするウイルスや細菌の活動を抑制する抗菌作用によって身を守る「免疫システム」があります。
歯茎が歯ブラシによる刺激を受けないでいると、唾液の分泌量が低下し、粘膜の免疫力が低下してしまうのです。人間が持つ優れたこのシステムも、お口の中が不潔のままでは機能してくれないのです。
総入れ歯の方に行ってほしい口腔ケアの手順
では、入れ歯を使用している方はどのように口腔ケアを行えばよいのでしょう。ケアを怠るリスクが多い「総入れ歯」の方に、ぜひ行ってほしい口腔ケアをご紹介します。
1.口腔ケアの必需品
入れ歯を外した状態の口腔内は、やわらかい口腔粘膜だけになっています。通常の歯ブラシでは刺激が強すぎて粘膜を痛めてしまうおそれがあります。
歯ブラシを使用する場合には毛先が柔らかいものを選びましょう。他にも棒の先にスポンジが付いたケアスポンジや、指に巻いてふき取るタイプの口腔ケア用ウェッティー、舌ブラシなどがあります。
2.口腔ケアを行う前の確認
もしも口腔内が乾燥していたら、清掃道具で粘膜を傷つけてしまうこともあります。また、汚れもこびりついてなかなか剝がれにくくなっています。
その場合には清掃前にブクブクうがいを行い、お口の中を十分に潤しておきましょう。保湿ジェルやスプレーでマッサージしながら保湿するのも、唾液の分泌を促しますので効果的です。
歯茎を刺激すると、マッサージ効果で血行もよくなり、元気な歯茎を保つことにもつながります。
3.粘膜の清掃
ケアスポンジや、ケア用ウェッティーなどを水で浸して準備します。そして頬の内側や頬と歯茎の間、唇と歯茎の間、上あごの義歯床が当たる部分、歯茎の土手(顎堤)などをマッサージするようにしてやさしく磨きます。
舌の表面には舌苔が付着しますので、舌ブラシでやさしく擦るようにしましょう。
まとめ
入れ歯の清掃は外して行えるため、気にかけて清掃する人が多いと思います。
その反面、入れ歯と接している口腔内粘膜のケアは忘れがちですが、外した入れ歯の汚れ具合と同じぐらい汚れていると考えましょう。細菌の繁殖による健康への悪影響や、入れ歯が入れられなくなるような口腔環境の悪化を招くおそれがあります。
また、定期的に歯科検診を受け、入れ歯の適合チェックや口腔内の状態チェックもしてもらいましょう。