2017.4.18更新
「入れ歯が口内に当たって痛い」、「何度も口内炎を繰り返す」というような症状でお困りの方はいらっしゃいませんか?
調整をして歯ぐきに当たる部分を削るにしても、入れ歯の強度を保つことを考えると限界があります。
そこで今回は、なかなか入れ歯の素材に慣れない方や、痛みでお悩みの方にお勧めの「シリコン義歯」をご紹介します。
シリコン義歯とは?
シリコン義歯とは、歯ぐきと接する部分である義歯床の一部がシリコンでできている入れ歯です。
素材にもいくつかの種類がありますが、コンフォートというシリコンがよく使われています。
通常の入れ歯の義歯床に比べて柔らかいため、「入れ歯が当たって痛い」とお悩みの方にはおすすめです。
また、今使用中の義歯をそのまま利用し、一部シリコンに改修することも可能です。
シリコン義歯を使用するメリット
1.入れ歯が口内に当たる際の痛みが軽減される
歯ぐきと接する部分がシリコン素材になることで、クッションの役割を果たします。
固い義歯床が歯ぐきや口内の粘膜に当たって痛むという不快感や、トラブルを軽減することができます。
2.痛みが少ないため、よく噛めるようになる
固い義歯床では、食べ物を噛むときなどに圧力がかかると、さらに痛みを感じやすくなってしまいます。
そこでシリコン素材にすることで、圧力が軽減し痛みが少なくなります。
入れ歯にしてから食事がストレスになっていたという方も、食欲が以前のように復活するかもしれません。
3.吸着力があり、あごの骨が少なくてもフィットする
シリコン素材は、通常の義歯床と比べて適度な弾力感があり、歯ぐきとしっかり吸着します。
顎の骨が吸収されて少なくなり、顎堤(歯茎の盛り上がった部分)がない場合でも入れ歯が比較的安定しやすくなります。
シリコン義歯なら痛くなりにくい理由
このようにシリコン義歯には様々なメリットがあるのですが、痛みを感じにくいというのは魅力的ですよね。この、痛みにくさの理由について、深く見ていきましょう。
1. まずは入れ歯が痛む理由を知りましょう!
シリコン義歯が痛くなりにくい理由を考える前に、保険適応のレジン入れ歯で痛みを感じることがある理由を考えてみましょう。
「噛む」という動きには、大きな圧力がかかります。
通常、歯の根っこがある天然歯の場合は、歯を支える骨と歯の根っこの間にある「歯根膜」がクッションの役目を果たすため、衝撃がダイレクトに伝わることはありません。
しかし入れ歯の場合は、噛む圧力が歯茎に直接かかることになります。プラスチック素材で硬い「レジン床義歯」と、顎の骨の間で歯ぐきが圧迫され、痛みを感じやすくなるのです。
2. 痛みを感じるメカニズムを解消することができる
そこで、レジン床義歯のデメリットである「硬さ」を解消したのがシリコン義歯の最大のメリットです。
シリコンの柔らかさがクッションの役割を果たすため、噛んだ時の圧力を緩和して痛みを感じにくくなります。
レジン床入れ歯によって歯ぐきが血流障害を起こすといったトラブルも少なくなるでしょう。
シリコン義歯・取り扱い上の注意点
通常の義歯よりもメリットが多い義歯のように感じられるシリコン義歯。
しかし、デメリットともいえる部分もあります。
使用するうえで気を付けなければならない注意点も認識しておきましょう。
定期的な調整が必要
入れ歯はどのタイプであれ、どうしても顎の骨が徐々に痩せて顎堤が低くなってしまいます。
いくら吸着力が高いとはいえ、いずれは合わなくなってしまうことが多いです。
そのため定期的な調整が必要になります。
金属床と比べると汚れがつきやすいことも
シリコンは分子的に疎なため、金属の床に比べて汚れが付きやすい素材です。
清掃を怠って汚れたまま装着していると、取り除くことが困難になり歯周病などにも繋がります。
そのため毎日こまめに清掃することが必要となります。
入れ歯が若干厚みを増す
従来の入れ歯よりも、シリコンを加えたことで噛む力が増すことが予測されます。
その咬合力に耐えられるよう、入れ歯本体の強度も確保しなければなりません。
そこで厚みを少し増やすような対策をとることがあります。
シリコン義歯ができるまでの流れ
次に、シリコン義歯が完成するまでの流れを確認しましょう。
1. お口の型取り
精密な入れ歯を製作するために、まずは患者個人専用の型枠から作っていきます。お口の状態を診査し、歯列に合わせて上下の歯型を採ります。
2. 専用トレーで歯型採り
1回目の歯型採りで製作した専用トレーで歯型を採得し、患者の口腔内を精密に再現した石膏模型を製作します。
また、ワックスを用いて噛み合わせも採得しておきます。
3. 噛み合わせを検討し決定する
出来上がった作業用の石膏模型とワックスで採得した咬み合わせを使用し、入れ歯で重要になる噛み合わせの位置や高さを検討します。
4. 仮の入れ歯でチェックをおこなう
噛み合わせの位置や高さを決定したら、蝋で作った仮の入れ歯を製作し、患者に装着して確認してもらいます。
5. 適合状態の確認をおこなう
蝋で確認した後、実際にシリコン義歯を製作します。
そして再度患者の口腔内に装着し、噛みしめた状態のときに圧力が均等にかかっているかどうかの適合制度を確認します。
浮いている部分が無いか、均等に圧力がかかっているかなどを確認して完成です。
作成にかかる費用はどのくらい?
費用は保険外のため、歯科医院によって金額に差があります。
シリコンを貼り付ける料金として、10~20万円(上下どちらか片方につき)が相場です。
義歯製作費用は別途かかりますのでご注意ください。
まとめ
シリコン義歯は、入れ歯の義歯床による痛みにお悩みの方にはぜひおすすめしたい技法です。
保険は適用外になりますが、まずは今使っている入れ歯をシリコン義歯に改修できるのかどうか、入れ歯専門医に相談してみましょう。