入れ歯は完成したら終わりではありません。
せっかくお口にピッタリの入れ歯を作っても、日々のお手入れを怠ると大変な事態を招くことに。
たとえば定期的なメンテナンスを受けずにいたり、保管方法が不適切であったりすると、口腔内や全身に悪影響を及ぼすこともあるのです。
毎日行う基本のお手入れ方法
人工の歯といえども日々のお手入れを欠かしてしまうと、他の歯が虫歯や歯周病になることもあります。
まずは毎日行うであろう一般的な入れ歯のホームケアをご紹介します。
1.すすぎ洗い
まずは食べかすやヌメリを流水でしっかり洗い流します。
この時、熱いお湯を使えば殺菌消毒ができそうな気がしますが、入れ歯の素材が高温で変形する恐れがあります。
必ず水で流すようにしてください。
2.ブラッシング
本体を入れ歯専用の歯ブラシで磨きましょう。
金属バネ(クラスプ)部を磨くとき、無理な力をかけすぎると変形してしまうので注意。
歯磨き粉を使ってしまうと、研磨剤で入れ歯を傷つけてしまうので、素磨きが望ましいです。
3.もう一度すすぐ
磨いた後は浮いた汚れをよく洗い流して仕上げます。
お手入れで入れ歯を外したら、口内チェックも行いましょう
毎日のお手入れの際には、入れ歯そのものだけを洗ったり磨いたりすればよいというわけではありません。
外したときに残存している歯も清掃をおこない、さらにお口の中の粘膜などに異変が無いか確認することをオススメします。
では、具体的にどんなところを確認すればよいのでしょうか?
1.グラついている歯は無いか
部分入れ歯を使用している場合、残存している歯に入れ歯を固定するため、どうしても負荷がかかってしまいます。これによって健康な歯であっても歯がダメージを受けて根っこが吸収されてしまうと、歯がグラつく症状が起こる場合があります。
しかし、入れ歯を付けている時にはあまり気づくことができません。入れ歯を外して残存歯だけになった時、グラグラしている歯が無いかどうかチェックするようにしましょう。
2.極度に口内が乾燥していないか
入れ歯を使用していると、噛みにくさなどから咀嚼回数が減る傾向があり、唾液腺が刺激されにくくなると唾液の分泌が減少することがあります。
また、義歯床で唾液腺が覆われることも、唾液減少の原因になります。
入れ歯を外したお口の中に潤いが少ないと
感じたら、唾液分泌量が足りていないのかもしれません。
唾液には入れ歯と歯茎を密着させる役割もあり、唾液が少ないと入れ歯が安定しにくくなってしまいます。また、そのことによって入れ歯が歯茎に直接当たるため、お口を動かしたときに擦れて歯ぐきを傷つける原因にもなるのです。
これらも外した時に気付くことが多いので気にかけておきましょう。
3.口内炎ができたり増えたりしていないか
入れ歯と接している歯茎の粘膜は、通常よりもダメージを受けやすい環境になっています。入れ歯が合っていないまま使用していると、入れ歯が強く当たる部分が口内炎になってしまうことがあります。
いつも同じ場所に口内炎ができていないか、また数が増えていたり、頻繁に繰り返したりといった症状があれば、入れ歯の調整が必要になる可能性が高いです。
痛みは我慢せずに、早めに歯科医院に相談するようにしましょう。
4.入れ歯が当たって赤くなっていないか
入れ歯を外したあとの粘膜に赤くなっている部分があれば、入れ歯が当たっている場所である以外にも、歯肉炎になっている可能性もあります。
合わない入れ歯をしていると、入れ歯と粘膜の間にすき間ができてしまい、そこに食べかすや歯垢などの汚れが溜まりがちです。それらの刺激によって歯茎が腫れて歯周病の症状を起こすことがあります。
入れ歯を清掃する際には、お口の中もゆすぐなどのケアを怠らないようにしましょう。
5.残存歯に虫歯ができていないか
部分入れ歯の場合、隣の歯の歯茎のあたりに「クラスプ」という金属のバネで入れ歯を固定します。
元々歯と歯茎の境目は虫歯になりやすい場所です。そこに金属の装置が常に当たっているのですから、汚れが残りやすくてさらに虫歯になりやすい環境だといえます。
入れ歯の両側の歯は特に気を付けて観察するようにしましょう。
そして、入れ歯を外した際には、残存している歯もしっかり磨くように習慣づけてください。
6.「口腔カンジタ」にも注意!
もしも歯茎に白いブツブツした発疹ができていたら「口腔カンジタ」かもしれません。
合わない入れ歯を長く使っていることで粘膜と入れ歯の間に汚れが溜まってしまうことは先にもご紹介しましたが、これが原因で口腔カンジタを発症してしまうこともありますので、赤くなっているところだけでなく、このような変化にも気づけるようにしっかりチェックしてくださいね。
定期的に入れ歯洗浄剤を使いましょう
洗浄剤には、入れ歯に付着する臭いの原因となる雑菌の除去、タバコのヤニやコーヒー・茶しぶなどの着色を落す効果があります。
使用方法や効果は製品によって違いますので、説明書の用法を守って使用してください。
寝るときは外す?つけたまま?
就寝時に着けたままでよいか、もしくは外すのかは、患者さんの症状によって異なります。
外したほうが衛生的だと思われがちですが、かみ合わせへの影響を考えて、付けたまま寝るように指導される場合もあります。
主治医の指示に従いましょう。
入れ歯の保管はどうすればいいの?
前述しましたように、常時つけたままなのか、外すことがあるのかは人それぞれ。
もしも外すように指導された場合は、乾燥による変形や破損が起こらないように、水や洗浄剤などを入れた専用容器に入れて保管するようにしましょう。
入れ歯のお手入れを怠るとこんな恐ろしいことが……
入れ歯とはいえ、天然歯と同じように歯垢や食べかすが付着します。
もしもお手入れを怠ってしまうと、大変な事態を招くこともあります。
1.臭いや汚れがつく
入れ歯に付着した歯垢や食べカスが腐敗し、口臭の原因になってしまいます。
2.入れ歯にカンジタ菌が増殖する
入れ歯が不衛生な状態にあると、カンジダ菌などが増殖します。
これらは加齢やストレスなどで抵抗力が落ちているときに「口腔カンジダ症」として発症し、お口だけでなく全身にも影響を及ぼす症状が現れることがあります。
3.残っている自分の歯が虫歯や歯周病になりやすくなる
入れ歯と天然歯の境目や金属バネ(クラスプ)に歯垢や食べかすが付着したままになっていると、虫歯や歯周病の原因になります。
メンテナンスで歯科に通う頻度は?費用は?
入れ歯は完成した後も歯科医院でのメンテナンスが重要です。
どれくらいの頻度で調整が必要なのでしょう。
また、費用はどれくらいかかるのでしょうか。
適応具合に合わせて定期的なメンテナンスを
新しい入れ歯を入れた後は、違和感を覚えることはよくあります。
完成後、2~5回程度調整のために通院が必要になることも。
その後も金属バネの緩みや?み合わせを調整するため、1年に2~6回程度の定期検診が必要になります。
調整にかかる費用はどれくらい?
保険適応の部分入れ歯を調整する場合、費用は約300円~1000円程度です。(初診・再診、調整度合等で金額が違います。)
もし金属バネや人工歯の作り変えなどがあると金額が上がります。
保険外の入れ歯の場合、調整料は歯科医院ごとに設定が異なりますので、確認しておきましょう。
まとめ
歯が抜けてしまったら、「入れ歯を作って終わり」ではありません。
日々のお手入れと、定期的な調整などのメンテナンスが必要になり、費用もその都度かかります。
せっかく作った入れ歯ですから、少しでも長く快適に使用したいもの。
そのためには日々のセルフメインテナンスと歯科医院での定期的なメンテナンスが重要です。