総入れ歯にする際、歯科医院から使用する材料に関しての提案があると思います。これから長く使用していくことを考えると、性能の良さから自費の材料を選択する方もいるでしょう。
自費総入れ歯の中でも人気の高い「金属床」の入れ歯について詳しくご紹介します。選択の際に是非参考にされてみてください。
自費総入れ歯の代表格、金属床義歯ってどんなもの?
1.床部分が金属だから、熱伝導が良く食事が美味しい!
味覚は舌で感じるだけではなく、温かいもの・冷たいものをお口全体で感じることも美味しく感じることのひとつです。総入れ歯になると粘膜が装置に広く覆われてしまうのですが、金属床は熱伝導が良いので、食事の温度を自然に感じられます。
2.薄く作ることができるから、話しやすくて違和感が少ない!
金属床を使用すると、保険内で製作する際の材質よりもお口に接する面を薄く作ることが可能。違和感が少ないので会話もしやすく、ピッタリと合った入れ歯ができることが特徴です。
3.丈夫で割れにくい!
素材が金属ということから割れにくく、変形もしにくいのが利点です。
4.汚れがつきにくくて清潔!
保険適用で製作する入れ歯は、「レジン」というプラスチックを用いた材質でできています。この素材は傷がつきやすく、その細かな傷に汚れが入り込みやすいという欠点があります。
また、汚れが長時間付着したままになっていると、天然歯に比べて歯ブラシで磨いても落ちにくくなってしまいます。
その点、金属床の場合は表面が滑らかにできているため、汚れが強固に付着するということもありません。もし付着したとしても磨けば落ちやすいので、比較的清潔に保つことができます。
金属床総義歯 完成までの流れ
金属床総義歯は保険適用のレジン床義歯に比べるとかなり精密に作られるため、完成までの作業工程が細かく分かれています。
どのような工程で製作されているのでしょうか。
1. お口の型取りをおこない模型を作製する
レジン床入れ歯を作る場合と同じように、まずは上下のお口の型取りをします。
そして型取りした枠に石膏を流し込んで患者の現在のお口の状態を再現した模型を作製します。
2. 構造の設計をする
歯科医師と歯科技工士とで、模型を参考に基本的な設計図を作ります。
適切な強度で入れ歯が仕上がるよう数値化したりしながら計画を立てていきます。
装着感、舌感、維持力、強度を考え、発音や咀嚼(噛むこと)に悪影響のないように細かく考えられています。
3. 副模型を製作する
金属床の入れ歯を作る際には、精度を高いものにするために「副模型」を製作しておきます。
4. 蝋型模型(ワックスアップ)を製作する
事前におこなった構造の設計を基に、蝋(ワックス)を使って、金属部分になる部分の仮の土台を製作します。
蝋は熱で容易に形が変えられるため、この段階で手作業によって細かく模型に合わせながら作製します。
5. 埋没・鋳造作業をおこなう
蝋で作製した模型に金属の通り道を設けておきます。
そして、その模型を埋没剤で埋没します。この際、不純物や気泡が入らないようにしなければなりません。
埋没剤が固まったら1000℃以上にゆっくり加熱することで、中の蝋部分が溶けて空洞になります。
そこに金属を流し込むことにより、蝋で作製した模型の形に金属が出来上がります。
6. 金属の研磨と口腔内試適作業をおこなう
鋳型から金属を取り出し、研磨してきれいに磨きます。
その後、この金属に仮の義歯床を取り付けてお口にいったん試適し、金属の適合を確認します。
7. 人工歯の配列と重合作業をおこなう
金属が適合していたら、次は人工歯を配列します。
このとき、審美的に綺麗であるか、機能的であるかなどを考慮しながら配列し、正式にレジンで金属部分とつなぐ「重合」という作業を施します。
8. 入れ歯の調整・研磨作業をおこなう
重合が終わったら、再び模型に装着。作製前のお口と違和感の無いように確認しながら噛み合わせを調整し、研磨作業で綺麗に仕上げます。
9. 患者の口腔内で試適して仕上げ研磨をおこなう
最後に、患者の口腔内に指摘し、噛み合わせを確認しながら高さや噛み具合を調整していきます。
ここで問題なく調整が完了すれば一通り終了となり、あとは定期的な検診となります。
気になる金属床の入れ歯、費用はどのくらい?
1.ゴールドプレート
ゴールドは精密な加工が行いやすい金属。そのためお口へのフィット感が良い入れ歯に仕上がります。身体にも優しく腐食などもありません。 金額は約50万~70万円が相場です。
2.チタンキャストプレート
軽い重量のチタン。馴染みが良く違和感が少ないのが利点です。金属アレルギーも起こしにくいです。 金額は約40万~50万円が相場です。
3.コバルトクロムプレート
保険適応の材料で作成する場合の約1/3の薄さに作成できます。薄くても耐久性は抜群で、熱伝導率も良好。違和感少なく使用できます。 金額は約30万~40万円が相場です。
金属床の入れ歯は保険適応外の材料です。通院には歯型を取り、完成したら再度来院し試適・装着。そして1週間後くらいに再度来院してもらい、適合性や違和感がないかなどのチェックと調整を行います。
知っておきたい、金属床入れ歯を取り扱うときの注意点は?
1.日常のお手入れをかかさずに!
金属床の入れ歯の場合、リベースという床の調整をしたり修理などが難しい入れ歯です。日頃から清掃などのお手入れを十分に行いましょう。
2.金属アレルギーのある人は注意
金属床の中にはまれに金属アレルギーの人が反応してしまうかもしれないものもあります。種類を選ぶ際には、十分な説明を受けて選びましょう。
3.適合具合は自己判断しない
不都合が無い場合でも、定期的な歯科検診を受け、入れ歯の適合もチェックしてもらいましょう。
4.金属だからといって半永久的な入れ歯ではない
金属床の入れ歯は破損や変形は起こりにくい入れ歯です。しかし土台となる歯ぐきや顎の骨が衰えれば、いずれ合わなくなります。あまりにも合わなくなってしまった場合は作り変えるしかなくなることも。丈夫さを過信し過ぎて高価な入れ歯を作り、すぐに作り変えとなる可能性もゼロではないことを理解しておきましょう。
5. あとからの修復が難しく、作り替えになることがある
金属床は、入れ歯が合わなくなった際の修復の際に、金属部分を追加するということができません。
そこでどうしても、調整には「レジン」を盛り足して適合するように修復することになってしまいます。
レジンの盛り足しを重ねていると修復するたびに入れ歯が分厚くなってしまい、薄くて違和感が少ないという金属床義歯のメリットがなくなってしまいます。
どうしても合わない場合には、作り替えが必要となってしまうこともあるのです。
6. 口を開けたとき金属が見えることがある
金属床総義歯は、特に上顎の口蓋(こうがい)と呼ばれている部分が全体的に金属でできています。
通常時は目立つことはありませんが、大きくお口を開けて笑ったりするような場合には金属が外から見えてしまう場合もあります。
快適な総入れ歯なら金属床!
総入れ歯を作るとなると、お口の中の違和感がなるべく少ないものにしたいものですよね。そんな時には金属床入れ歯は最適な材料だといえます。ただし保険適応外の材料で、金属の種類によって金額もさまざま。製作の際には歯科医院の説明を十分に理解し、たとえ金属といえども半永久的ではないということをふまえた上で、選ぶようにしましょう。