<2017.2.9更新>
部分入れ歯と差し歯の違いを知っていますか?仕組みや費用だけでなく、メリットやデメリットにも大きな違いがあります。
今回は、部分入れ歯と差し歯の違いについて詳しくまとめてみました。是非参考にして頂ければと思います。
部分入れ歯と差し歯の違いとは?
部分入れ歯とは、虫歯や歯周病、突然の事故など、何らかの原因によって歯を失った部分に使用する、取り外しができる部分的な入れ歯のことを指します。
一方、差し歯は、残っている歯の根っこの中に土台を立て、上から歯の頭の代わりとなる被せ物を行う処置であり、土台と被せ物は、専用の接着剤で合着するため、取り外しができません。
1.1 固定する仕組みが全く違う
部分入れ歯の場合、入れ歯を固定するには、存在する歯にバネをかける必要があります。しかし、差し歯の場合は、残った根っこのみを使用するため、他の歯を利用して固定を行うことはありません。
1.2 差し歯には、できる場合とできない場合がある
部分入れ歯と違い、差し歯の場合、根っこの状態によっては処置が行えないケースも存在します。例えば、根っこにヒビが入っているときです。
そうでなくても虫歯の進行が酷い場合には、その分大きく削らなくてはならないため、根が割れる可能性が高くなります。ヒビが入ったり、割れてしまったときは、土台を立てずに、根っこを抜く場合がほとんどです。
1.3 費用の違い
部分入れ歯の場合、保険適用であれば約5千円~1万3千円ぐらいで作成する事が可能です。自費では10万円~50万円の物まであり、入れ歯の種類や歯の本数、歯科医院によっても違いがうまれます。
一方、差し歯の場合は、保険適用であれば1本あたり3千円~1万円、自費は1本あたり約4万円~20万円です。こちらも種類や歯科医院によって差があります。
1.4 作製にかかる期間の違い
部分入れ歯は、型採りをした後、噛み合せを決定し、完成となります。作製から完成までに必要な期間は約2週間~5週間で、使用していく上で不具合があれば、その都度調節が必要となります。
差し歯の場合は、型採りをした後、土台を合着します。土台の形成後に再び型採りをし、作製された被せ物を合着して完成となります。かかる期間は約2~4週間程度といわれております。
部分入れ歯と差し歯 完成後の違い
仕組みや費用など、完成にいたるまでの違いについてお伝えしましたが、部分入れ歯と差し歯では、完成後に使っていく上での違いも多々存在します。それぞれの特徴ともいえる違いをみてみましょう。
2.1 違和感の違い
部分入れ歯と差し歯では、使用中の違和感は大きく異なります。面積が大きく、直接歯茎にふれる部分入れ歯(特に保険適用のもの)の方が違和感を強く感じやすい傾向にあり、慣れるまでに時間が必要です。
一方、差し歯の場合では、元々存在した歯の根っこ部分に処置を行う形となる為、口腔内の違和感はほとんどありません。
2.2 トラブルへの対処のしやすさ
部分入れ歯のトラブルの多くは、緩みやキツさによる痛みです。どちらも歯科医院で入れ歯を調節する事で解決でき、あまり時間もかかりません。
一方、差し歯でのトラブルは、被せ物がかけたり、被せ物が取れる、また根っこが割れたりなど様々です。
場合によっては、合着した被せ物を機械で壊して、中を確認する必要があり、抜歯や再度被せ物を作りなおすなどその後の処置方法も変わってきます。
2.3 衛生面での違い
取り外しが可能な部分入れ歯は、付着した汚れを目で確認し、専用のブラシを使って丁寧に落とす事ができます。
また、入れ歯洗浄剤には殺菌効果がある為、お手入れを怠らなければ、毎回綺麗な状態で使用できます。差し歯の場合、他の歯と同じように磨くだけでは足りず、残っている根っこを使用している事から歯と歯茎の境目を注意して磨かなくてはなりません。
差し歯で起こる虫歯は、被せ物の上からではなく、境目から発生します。
2.4 見た目の違い
部分入れ歯には「クラスプ」という金属の固定するバネが付属しています。隣り合った歯のくびれ部分に引っ掛けて固定するため、歯の表面に銀色のバネが目立ってしまうことがあります。
それに比べると差し歯は、歯の頭全体からくびれまでの部分を歯科材料で人工的に製作し、歯の根っこにある土台に被せるため、見た目で人工歯だと目立つようなことはありません。
2.5 メンテナンス頻度の違い
部分入れ歯を使用するなら、定期的なメンテナンスのための来院が欠かせません。
着脱を繰り返すうちに、どうしてもバネの緩みが生じますし、歯茎が痩せると、義歯床と密着せずズレが生じる場合もあります。個人差がありますが、なかなか入れ歯が合わずに何度も調整しなければならないこともあります。
差し歯の場合には、接着材で合着しているため、よほどのことが無い限り調整が必要になるようなことはありません。ただし、外れてしまうと自分で取り付けることができませんので、いずれにせよメンテナンスのための通院は必須です。
2.6 寿命の違い
部分入れ歯は、メンテナンスを上手に行っていれば、隣接する歯を喪失したりしない限りは使い続けることができます。
ただし、人の歯茎の厚みは年々変化するものです。そうなったとき、何度もメンテナンスを繰り返し、バネの調整や義歯床を盛り足す作業をおこなっても入れ歯が合わない場合は作り変えが必要となります。
差し歯の寿命も、メンテナンスをしっかり行えば、半永久的に使用する事ができます。ただし人工歯とはいえ、被せている差し歯の中には天然の歯がありますから、境目から虫歯になる可能性はあります。
人工歯の下で虫歯が進行し、歯冠の部分が外れてしまったり、神経の処置が必要になったりすることも。その際には歯科医院にて治療や人工歯のやりかえが必要になる場合もあります。
隣の歯に負担をかけないマグネットデンチャーの魅力
ここまで、差し歯は歯の根っこが残っていないとできないことや、差し歯なら部分入れ歯と違って隣の歯に負荷をかけないことを説明してきました。
しかし入れ歯の中でもマグネットデンチャー(磁石式入れ歯)なら、他の部分入れ歯と違ってクラスプが要らないので、取り外して洗えてかつ隣の歯への負担がかからない、差し歯と入れ歯の良いとこ取りができる入れ歯だといえます。
そんなマグネットデンチャーについてお伝えいたします。
3.1 磁石で固定する、クラスプのない部分入れ歯です。
通常の部分入れ歯であれば、両側に残っている歯にバネをかけて固定します。バネをかける歯に負担がかかりますし、着脱を繰り返すうちに入れ歯が合わなくなってしまうなどの不具合が生じやすくなります。
部分入れ歯を磁石で固定する「マグネットデンチャー」は、クラスプがありません。入れ歯と歯茎を磁力でピッタリと安定させ、隣の歯に負担をかけるリスクも無くなります。
3.2 歯の根が残っている必要があります。
ただしこの方法は、失った部分の歯茎に歯の根っこが残っていることが条件です。ですから、抜け落ちてしまった部分の入れ歯ではなく、歯冠部分は大きく失っていたがかろうじて歯の根っこだけは残っていたというような症例の場合に施術可能です。
また、根っこが無い場合はインプラントを併用することで使用可能になります。
処置としては、残った歯の根っこの上にふたをするように「磁性金属」(磁石にくっつく金属)をくっつけます。
そして入れ歯の床が歯茎と接する面には、小型の磁石を埋め込みます。
3.3 しっかり固定できて、取り外しも簡単です。
歯茎の中に埋め込まれた金属と、入れ歯に埋め込まれた磁石が反応し、バネの支えが無くてもしっかりと固定することができます。
そして取り外すことも出来るので、従来の部分入れ歯と同様、歯磨きの際には外して清掃することもでき、バネに汚れが溜まることも無くなるので、お口の中を清潔に保つことができます。
隣の歯へかけていた負担もなくなるのですから、良いとこ取りができる入れ歯だといえます。
3.4 金額的な負担は?
現状ではマグネットデンチャーは保険外診療となっています。そこで、費用は通常の入れ歯の費用にプラスする磁石の値段と、埋め込む際の施術費用がかかります。
しかし中には、今まで使用していたバネ式の部分入れ歯を利用して、磁石を埋め込むことができる場合もありますので、施術や費用に関しては歯科医院に相談してみてください。
3.5 磁気が体に影響を及ぼす心配もなし!
マグネットデンチャーの磁気が、ペースメーカーを使用している人に影響はないのかといわれることがあります。磁気はお口の外に漏れませんので、安心してお使いいただけます。
また、MRIやレントゲン撮影などの際には、基本的に問題ありませんが、もしもの場合には、磁石は入れ歯側にはいっているため、外して検査すれば問題なくおこなうことができます。
まとめ
いかがでしょうか?部分入れ歯と差し歯は、全く違う物であり、どちらにもメリットとデメリットが存在します。
違いを知ることで、適切な処置方法が何なのかが見えてきます。ご検討中の方や周りにお悩みの方がいらっしゃったら是非今回の内容を参考にして頂ければ幸いです。