2017.04.24更新
入れ歯を作ろうとする人が必ず直面する悩み――それは保険と自費のどちらを選ぶかということではないでしょうか。
この違いをしっかりと理解した上で入れ歯を作らなければ、後で激しい後悔に襲われてしまいます。
今回は保険と自費の入れ歯の違いについて、あらゆる角度から総ざらいしてみたいと思います。
1 使える素材が違う
1.1 保険の入れ歯はプラスチックが中心
保険の入れ歯で主に使われる素材は、レジンというプラスチックです。強度を保つために床が厚めに作られています。
また、人工歯の部分は色や形の種類が限られています。
1.2 自費の入れ歯は金属やシリコンなど実にさまざま
対する自費の入れ歯は、金属やシリコンなどを使用することができます。床部分に金属を使うことで、熱伝導が良いために食事が美味しく感じられますし、シリコンは見た目が歯茎に近いので審美性に優れていて、フィット感も抜群です。
両者ともプラスチックよりも薄く作ることが可能なので、口の中に入れたときの違和感が少ないのです。
人工歯の部分についても、選べる色や形の種類が保険の比ではなく、元々の歯に合った入れ歯を作ることが可能です。
2 入れ歯の固定装置が違う
2.1 保険の入れ歯は金属で固定
保険の入れ歯は金属のバネで固定します。固定する歯に負担がかかって違和感があるだけではなく、歯に傷がついてしまうこともあります。また、部分入れ歯の場合は固定する歯を取り囲むように金属をつけますので、笑ったときに金属が見えてしまうこともあります。
2.2 自費の入れ歯は固定装置が目立たず、方法もさまざま!
対する自費の入れ歯は、固定装置の種類も様々です。
ノンクラスプデンチャー(スマイルデンチャーとも呼ばれます)という入れ歯は、固定装置が歯茎と同じ色をしているので、大きく口を開けて笑っても目立ちません。
歯茎と入れ歯に磁石を埋め込み、磁力で固定させるマグネットデンチャーは、ぴったり歯茎にフィットするだけでなく取り外しも簡単です。
3 メンテナンスの頻度に差はあるの?
3.1 保険か自費かにかかわらず、半年に1回は歯科医院へ!
入れ歯のメンテナンスのために通院する頻度は、保険か自費かではなく、普段の入れ歯の扱い方、元々のお口の状態によって異なります。
少なくとも半年に1回の通院を勧めるところがほとんどです。
3.2 合わない入れ歯は恐ろしい病気のもと!
どんな入れ歯でも、加齢による歯茎の衰えや、入れ歯自体の消耗が原因で徐々に合わなくなります。合わないものをそのまま使用し続けると、単に違和感があるだけではなく、口内炎や歯肉癌を発症することもあるのです。
保険や自費に関係なく、定期的に歯科医師に調整してもらうことが重要です。
4 入れ歯の寿命はどちらが長い?
4.1 保険の入れ歯は磨り減りやすい……
プラスチックでできている保険の入れ歯は、毎日の使用で変形しやすいという致命的な弱点があります。繰り返し歯とぶつかることでどうしても磨り減ってしまうため、やがて食事や発音に不具合が出るなど、入れ歯としてはうまく機能しなくなってしまうのです。
4.2 自費の入れ歯は丈夫で長持ち!
自費の場合、金属やセラミックなどの硬い材料を用いることができるので、耐久性に優れ、比較的長持ちします。
ただし同じ自費入れ歯でも、歯茎と同色のシリコンを使用したノンクラスプデンチャーは、審美性に優れる代わりに耐久性はやや劣ってしまいます。
5 費用はどのくらい違うの?
5.1 保険は工程が少なく費用も安い
保険での入れ歯作製にかかる費用は、総入れ歯で10,000円~20,000円ほど、部分入れ歯で5,000円~15,000円程度です。
5.2 自費は費用が高いぶん、使用する道具やかける手間が違う
自費診療の入れ歯は、高いものでは40万円前後になることもあります。しかしその高さには理由があり、かかる工程の数は保険の2倍です。歯型をとるための材料から、使用する器具まで、あらゆるものが自費専用の特別なものを使用しています。
6 味覚への影響はどう違う?
6.1 保険の入れ歯は熱の伝わりがいまいち
入れ歯は「義歯床(ぎししょう)」と呼ばれる部分で、お口の中の歯ぐきや上顎などの粘膜を大きく覆います。このことによって粘膜には、熱い・冷たいなどの温熱刺激や、食品の質感などが直接届かなくなってしまいます。
その他にも舌が粘膜を触ることで感じる刺激や、食べ物を口に入れた際に感じる圧刺激などが妨げられてしまいます。
特に、保険の入れ歯で使用される素材は熱伝導率がよくありません。食事の際にさまざまな妨げがあるだけでなく、食べ物の温度を感じにくいことが、さらに美味しさを感じにくくしてしまうのです。
6.2 自費の入れ歯は熱伝導がよく食事も美味しい!
自費の入れ歯の場合も、お口の粘膜を覆うことにはなります。しかし保険の入れ歯の素材よりも優れた素材を選択して作製することができるため、保険の入れ歯に比べて食事を美味しく感じることができます。
たとえば、柔らかい素材や粘膜にフィットする素材であったり、義歯床の部分がとても薄く作られてあったりといったように、お口への違和感をできるだけ少なく作ることができるのです。
そのおかげで熱伝導もあり、食感も感じることができ、舌などのお口の動きも妨げずに食事をすることができます。
7 装着時の話しやすさに違いはある?
7.1 保険の入れ歯は喋りにくく感じることも
保険の入れ歯に使われる素材には制限があり、「レジン」という素材が使われます。この素材は強度の関係上、ある程度の厚みが必要で、あまり薄くしてしまうと破折や変形の原因となってしまいます。
そのためどうしても厚みがある入れ歯になってしまうため、本来のお口の中よりも狭く、舌の動く範囲も狭くなるため、以前のように発音がしにくくなると感じる方が多いようです。
7.2 自費の入れ歯は発音に違和感が少ない
先にご紹介したように、自費の入れ歯は素材を選択することができます。そこで強度のある素材を選択すれば、保険の入れ歯よりも薄く作ることが可能です。
また、保険の入れ歯の作製工程よりも精密な検査や多くの段階を踏んで、一人ひとりのお口に違和感なく馴染むように作られます。
よって、保険の入れ歯よりも元のお口の状態に近づけて作ることができるため、発音に支障をきたすことは少ないとされているのです。
8 顔の見た目が変わってしまうことってある?
8.1 保険の入れ歯は顔の印象に作用しがち
保険の入れ歯はどうしても義歯床に厚みがでてしまいます。そのため、これまでの歯ぐきよりも厚みが増してしまい、外から見たときに顔の印象が変わったように感じることがあります。
また、入れ歯を作製する前に歯が無いままの生活をしていた場合や、歯ぐきの退縮や年齢的な衰えなどから口元にハリがなくなっていた場合は、保険の入れ歯を入れることで余計に顔つきの変化を感じるのかもしれません。
8.2 自費の入れ歯なら見た目への影響を抑えられる
自費の入れ歯は、精密な検査と試適を繰り返しながら作製します。薄くても強度が保てるような素材を選べるので、ぴったりと口腔内にフィットし、本人の歯のようにしっかり違和感なく食事することが可能です。
その結果、咀嚼時の刺激が歯茎にきちんと伝わることで、口まわりの筋肉の衰えを予防し、歯ぐきの退縮も防ぐことができます。
自費の入れ歯を使用するほうが、口元のハリが保たれるため、顔の印象が変わって見えるというような影響は少ないと言われています。
9 壊れてしまったとき、修理のしやすさに違いはある?
9.1 保険の入れ歯(プラスチック製)は修理が可能
保険の入れ歯は、割れたり欠けたりしてしまった場合、大幅な作り直しが必要でない限りは歯科医院で修理が可能です。また、お口に合わなくなってしまった場合は強度を損ねない範囲で削ったり、隙間ができた部分には材料を盛り足したりして調整することができます。
さらに、もしも失った歯が増えてしまった場合は、既存の入れ歯に人工歯を追加して作製することが可能な場合もあります。
10 どうしても合わない!入れ歯の作り直しは可能?
10.1 保険適用の作り直しは6ヶ月の間を空けないと不可
保険適応の入れ歯の場合、材質が選べないこと以外にもいろいろな決まりがあります。
入れ歯を保険で作製してから6か月の間は、再び保険で入れ歯を作ることができません。ですからもしもお口に合わない場合は、歯科医院でその都度調整をして使用するか、自費で新しく作り直すということになります。
10.2 自費での作り直しには期間の制限はありません。
自費で入れ歯を作った場合には、保険適応の入れ歯のような制約はありません。そこでもしも不適合によって調整では難しい場合、6ヶ月以内であっても入れ歯を作ることができます。
また、自費の入れ歯の場合は、歯科医院によって保証期間等が設定されていることが多いです。作製する前に、短期間で作り直したり修理したりする場合の料金についてもよく理解しておきましょう。
11 入れ歯の汚れ方やお掃除の方法に違いはある?
11.1保険の入れ歯は汚れやすい
保険で作られる入れ歯の材質である「レジン」は、細かい傷がつきやすく、熱による変形の可能性もある素材です。表面に細かい傷ができるとそこに汚れが付着し、ブラシで磨いても落ちにくくなってしまいます。
また、変形によって自分の歯茎と入れ歯の間に隙間が生じ、入れ歯の裏側に汚れが入りこみやすくなることもあります。
食後に歯をみがく感覚で入れ歯も磨いたり、就寝前に洗浄液に入れるなどこまめに清掃する必要があります。
11.2自費の入れ歯は汚れが付きにくい
自費の入れ歯に使われる素材は、保険の入れ歯のように汚れが落ちにくいというようなことはあまり起こりません。精密に作製されているため、歯茎との密着度も高く、入れ歯の裏に汚れが入り込むことも少ないです。
お手入れ方法は材質によって違いがありますので、専用のブラシや洗浄液などがあるかどうか、歯科医院に確認して使用するようにしましょう。
自費入れ歯は入れ歯専門医に依頼しよう!
いかがでしたか。ここまで見てきた違いを踏まえると、単に費用の安さだけで保険の入れ歯を選択するのは間違いだと言えるのではないでしょうか。
とはいえ自費入れ歯の作製には、非常にハイレベルな技術を要します。入れ歯の症例が多い歯科医院を選び、信頼できる歯科医師とよく相談し、自分に本当に合った入れ歯を獲得しましょう!